---------- 2004 ----------
見て聞いて語らん新たな年の夢
智慧一つ皺二つ増え年新た
申しぶんのない湯かげん去年今年
寒月の風を治めし夜のしじま
寒月の湖上の舟の渡るかな
冬天へほめられし句をそらんずる
これしきの病ごときぞ冬木の芽
水やりの水吹き返す空っ風
空っ風振り返っても空っ風
ストーブに切り干し芋と手をあぶり
本読みの声の明るき春の昼
春来るさくらうぐいすよもぎ餅
歯に物のはさまりやすき木の芽雨
二階から起きて来たりし花粉症
春めくや鍋の何やら焦げており
春一番ビルは開かない窓ばかり
春眠のシャボンのような浅き夢
万愚節季節は行きつ戻りつつ
春の湖ひねもすのたねのたねかな
草若葉初めて打ったツーベース
葉桜や歯科医の角を行き過ぎて
葉桜の歯科医へ向かう細き道
菜の花にとまらぬ蝶もおりにけり
菜の花にとまりたくないときもある
菖蒲湯の葉のこそばゆき喉仏
踏まれても引き抜かれても草若葉
ギュルギュルと鳴る車椅子梅雨に入る
雨に日に東へ西へ親燕
花南天千の光を身にまとい
陽炎や「冬のソナタ」が流行りとか
西日さすすでに夕刊配られて
よれよれの千円紙幣晩夏光
少年の正座している背の涼し
今日は雨明日があるさ花芙蓉
秋晴の風力発電ひとやすみ
打ち合わす両手のひらをもぬけの蚊
冷え込みの朝となりしや余震なお
柿落ちる万有引力のせいじゃなく
柿落ちて万有引力だらけかな
小春日のスイートポテトのやわらかさ
肋骨は指の太さかそぞろ寒
夢だとはわかって見る夢冬ぬくし
イルミネーション早やまたたいて日短し
除夜の湯の溢れて遠く鐘の音