2013年12月31日火曜日

2013年(平成二十五年)

元旦やまっさらなノートの一行目
丹頂の雪よりかるく舞い踊る
絵に描いた餅も投げ入れどんど焼き
立春や人差し指を立ててみる
丸刈りの頭のてっぺん寒戻る
凍空を万が一という隕石
人伝に聞きたる訃報冴え返る
介護士の手の甲にメモ春隣
マスクして美人の増える春隣
赤鬼の目にも涙や花粉症
杉花粉黄砂あげくにPM2.5
湯上りの湯気のふわふわ春近し
梅一輪二輪三輪今朝八輪
梅咲いて桜も咲いて誕生日
三寒四温まるい土俵に徳俵
花冷えや脇に差し込む体温計
血圧が少し低めの花曇り
朝寝して夢から覚めた夢を見た
帰ろうか帰るのよそうか花の雨
花吹雪完全試合にあと一人
傘はみな骨と皮なり花嵐
春の水そろりそろりと手をのばす
吸い飲みにあふれるほどの春の水
春の水口にふくみてやわらかし
一滴の表面張力春の水
春めぐりきて止めどなき汚染水
もう少し眺めていたい茶の若葉
茶の若葉すぐに摘まれてゆくさだめ
鮮やかに新茶一服香り立つ
あやふやな記憶つなげて春の昼
喜びと怒り哀しみ春惜しむ
さくらんぼ双子でありし父と伯父
半分は鳥の取り分さくらんぼ
草競馬走りたくない時もある
山若葉話は改憲とか護憲とか
母の日や妹の絵に句を添えて
母の日やたとえば声が出せたなら
蠅取蜘蛛跳んで携帯電話鳴る
快眠と快食快便夏が来る
スプーン一杯の命シラス食う
アジサイや地球は青い水の星
アジサイや薄紅色の恋心
アジサイや今も変わらぬ恋心
アジサイや変われない自分がいる
梅雨近し空気が粘り気おびている
梅雨に入る母の苦手は生魚
空梅雨の空に高々とぶボール
病床の梅雨の憂さごと坊主刈り
介護湯に洗い流すや梅雨の憂さ
アジサイやこの雨辛くないですか
アジサイの万華鏡めく雨上がり
梅雨晴れて三保も世界遺産となる富士山
世界遺産となりたる富士の山開き
追いかけて追いかけられて青田風
熱帯夜とぎれとぎれの浅い夢
アジサイや根が正直で赤くなる
優しさの心にしみる濃紫陽花
採血をした左の腕に蚊蚊蚊
猛暑日をさばく行司の身のこなし
看護師も蚊に刺されたる腕の裏
長病みの大暑猛暑で日が暮れる
猛暑日や今日もテレビが映らない
熱帯夜突拍子もない夢を見て
枕辺に音いろいろの揚げ花火
陽炎や遠い日の少年駈けてゆく
陽炎や平和がゆらぐ不安感
秒読みの後の静けさ法師蝉
スポーツなど無縁の体秋の風
水はただ低きに流れいわし雲
被災地にも咲いておりしや彼岸花
呼吸器に託す命や長き夜
呼吸器とつながっている秋暑し
秋冷や呼吸器の白き蛇腹管
テレビでは増税の話秋暑し
踏切に手向けられたる秋白き
酸いか甘いか庭木にひとつ姫リンゴ
引きこもり俳人ひとり秋の暮
秋深き宇宙の果てを見に行かん
二冊めの介護ノートや秋深し
玉薬舌に残して秋の水
アラ還の秋それぞれの同級会
妹に感謝いいにいさんの日
ほうき星壊れて消えた十二月
小春日や過去をころころ転がして
十二月カレンダーの裾反り返る
小春日や小津映画のあたたかさ