人々の願いそれぞれ初日の出
初夢は赤毛の羊六十頭
駅伝とサッカー三昧寝正月
退屈が顔だすベッド四日かな
冬ぬくし母に抱かれし幼児や
早口の気象予報士寒の入り
七草の名を覚えしがセリはどれ
豚汁の前も人の輪どんど焼き
逃げ足は誰にも負けぬ二月くる
節分や鬼は心の中におり
立春のシャッターチャンス逆さ富士
春浅し人の名前がでてこない
早春の最終ランナー雨上がり
父祖偲び面影潤む春の雨
やみそうでやまない雨に梅七分
春疾風心の隙を突いてくる
春浅し入れ歯を探す声がする
還暦の春の明るさほろ苦さ
啓蟄やこの世に出でて六十年
あと何年かかるフクシマ凍て返る
訪問看護師の笑顔桜咲く
桜咲くかけがえのなき山河あり
自分には自分の生き方チューリップ
今生きていること赤いチューリップ
にぎやかにラッパ水仙咲き揃う
うつむいて何を思うや水仙花
幼児の寝顔ほんのり初桜
還暦の春今日までそして明日から
粛々とためらいもなし花の雨
花冷えや色鉛筆の硬き芯
葉桜や記憶の中の父の声
晩酌の父の面影おぼろ月
うたた寝のあたり一面れんげ草
光降る野に置いてゆくれんげ草
筍や鍬振り下ろす風一瞬
たけのこの刺し身食べたき雨上がり
食べたいものが次々浮かぶ春の暮
夏近し我より若き君なれば
光る波喉をスルリと生シラス
新緑の庭凛と咲く紫蘭かな
初鰹我の血となり肉となれ
小言より耳にまとわる蚊の羽音
寄せ書きに紫陽花添えて届らる
紫陽花や雨はあんまり好きじゃない
紫陽花やプラネタリウム仰ぎ見る
生きかたを思い煩う梅雨の闇
迷い蛍ふわりととまる膝小僧
夏来たる生きる元気を湧き立たす
向日葵やいつも前向きなる姿
万緑や今ある平和守れるか
リハビリの汗と踏み出す一歩かな
山形の空を夢見てさくらんぼ
梅雨晴れ間インクの切れしプリンター
梅雨暑し窓は開かずの新幹線
七月や雨の訪問入浴日
半夏生いま人生のどのあたり
七夕や新たな気象衛星参上す
街灯に羽蟻群がる熱帯夜
今日大暑明日から猛暑となるらしき
かけられたほうが楽しい水鉄砲
炎天を来て炎天を行く回覧板
夕焼けや戦争のこと平和のこと
白球はぐんぐんのびて雲の峰
リハビリの一時帰宅や涼新た
新涼や顔からはがす蒸しタオル
新涼や呼吸器一時外す時
呼吸器に託す命や虫の声
看護師のスマホの中の彼岸花
彼岸花並んで白い彼岸花
白鵬が休場したる彼岸花
この道を力の限り彼岸花
秋晴やテンテンテケツクテケツクテン
五年後は高齢者なる敬老日
天高し竹馬一歩二歩三歩
秋風の先達となる案山子かな
夕日影十字架のごと案山子立つ
天高しヒーローの名は五郎丸
秋の蚊や介護師の手のしなやかさ
太陽系第三惑星星月夜
秋暑しマイナンバーを付けられる
ハロウィンの魔法にかかりゆく秋か
コスモスや風と光のハーモニー
一病もひとつの個性秋桜
秋風や雲海を飛ぶ孫悟空
小春日や電線工が登り行く
欧州を目指す難民鳥渡る
しぐるるや喪中葉書を読み返し
一本の種火のごとき紅葉かな
放課後のポプラ並木や冬近し
暖冬の鍋を焦がした匂い満つ
寝たきりの昼の短さ夜の長さ