新品のテレビで拝す初日の出
初富士や空に輝くエンブレム
春を待つキリンの首と象の鼻
まっさらな青空河津桜咲く
枝垂れ梅放物線をなす光
雨の日は雨に寄り添い枝垂れ梅
復興の光と影と冴え返る
春雷や母の退院を待つ兄弟
咲き始め五分咲き満開花の国
花は葉に母の入院長引いて
青嵐ブルーシートをあおり来る
入院六日執行猶予なき晩春
入院の時を忘れて春の句を
病室のピンクのカーテン春の日に
窓少し開けば音立て春の風
イケメンの新人看護師風光る
大茶園ここまでおいで若葉風
青空とさざめく若葉茶の台地
青嵐シュプレヒコールの真っただ中
眠れる薬飲んで眠れぬ春の月
五月晴れ退院の日のストレッチャー
母はまだ入院の庭鉄線花
ことごとく第三者の目夕薄暑
早苗田の天上天下光かな
紫陽花や吸い飲みの水を二口
紫陽花の咲きゆく色の移ろいや
退院の母の声ある梅雨晴れ間
失恋の口に一粒さくらんぼ
蠅叩き見かけによらぬ腕っぷし
今年一番言わずもがなの暑さかな
七夕の雨と滴る願いごと
介護師の夏は苦手と話しつつ
梅雨明けや力士幟の空の青
風鈴や我を気遣う老いし母
蝉しぐれポケモン探す人人人
寝たきりの五体にひびく花火の音
ゆく夏の光を影が追いかける
振り向けば我が影長し残暑光
猛暑日を来たる福祉を担う人
団扇置き採血に出す左腕
蜩や気管切開して十年
介護師の話初めは彼岸花
秋冷やベッドの鉄柵に手を触れて
初めてのデイサービスや秋日和
精一杯のばす手の先いわし雲
体育は苦手な時間いわし雲
デイサービスに流るる唱歌秋の声
秋思う入院したる母のこと
空っ風唇渇き目は潤み
看護師の産休に入る小春日や
冬の月町の灯りのやわらかし
落葉踏む靴底厚き山ガール
冬日射す点眼薬のひとしずく
舌先に欠けた歯の穴そぞろ寒
デイケアに集う人生冬うらら
星々にささげる祈りクリスマス