初日の出介護ベッドの背を上げる
町はまだ夢の中なる二日かな
東がこっちで北はそっちか恵方巻
メジロ来て絵になる枝とならぬ枝
少年は青年となり春の道
優しさも強さも白き梅の花
三寒の四温を待つや誕生日
うかうかと鍋焦がしたる春の昼
エイプリルフールまだ三月のカレンダー
花時の宵の雨音風の音
花冷えや人の苦労も知らないで
葉桜の中にひとひら父の忌や
母の日の朝が動き出す杖の音
シャーロックホームズが解く五月闇
五月雨や涙はいつも耳に入る
カーテンを透く朝の光聖五月
朝風に揺れるカーテン藤の花めく
青葉光少子高齢の里神楽
風薫る神楽の里のかっぽ酒
介護湯を出てもう汗をかいている
新聞の文字の重さや梅雨近し
生き辛さあれど生かされ生きる夏
笑えないテレビが笑う夜の暑さ
ダービー馬大歓声を飛ぶように
古民家の庭めぐる風花菖蒲
車椅子五月晴れならどこへでも
病床に辛抱身につけ梅雨に入る
音符のごと車窓ながれゆく紫陽花
呼吸器は命綱なれど梅雨は憂し
梅雨晴れやギター弾きたし歌いたし
梅雨空やグレーゾーンのその先は
空梅雨の夜をバイクが噴かし来る
梅雨戻る原発再稼働の気配
嬰児は声張り上げて夏来る
梅雨寝覚め生白い天井がある
蒸し暑し呼吸器の吐く息を吸う
さくらんぼ見ているだけの虫歯かな
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守るべきものとは何か半夏生
蓮の花戦争放棄がゆらぎだす
鳴きたくて鳴き足りなくて時鳥
初蝉ややわらかそうな君の耳
雷鳴や荒ぶる天と地の鼓動
丸刈りの仕上がり上々大暑かな
梅雨明けや海の匂いと日の匂い
立秋や朝のドラマのセリフずら
頭がかゆくてかゆくて熱帯夜
雅なる名の嬰児や秋立ちぬ
猛暑とか豪雨とか不機嫌な地球だ
山崩れ川溢れたる晩夏なり
行く夏や人間なんてと歌ってた
新涼や吉永小百合のフランス語
手のひらの白き貝殻夏惜しむ
行く夏や波の模様の貝の殻
悲しみの絶えることなし茜雲
彼岸花次のバスまで一時間
秋暑し案外揺れる救急車
秋の灯やノーベル賞に光る青
歌声はコスモス揺らす風になり
秋深む心音数えている静けさ
秋冷やどうなることかあの話
火のごとき紅葉ふれたる冷たさや
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薄寒しウチワのようなものという
寝ては覚め覚めては寝入る長き夜
渋柿たわわひとつぐらいはひょっとして
渋柿や世の中はそう甘くない
一日に三度米食う文化の日
もう少し歩きたかった秋夕焼
立冬や腹を立てたら腹が減る
いつの間に降り止みし雨秋深し
握手してにこりともせずそぞろ寒
初冬の風の痛さや鼻と耳
万感のラストシーンや秋惜しむ
柿紅葉昨日は高き枝の先
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小春日や転がり易きボールペン
黄葉の光ひとひら手のひらに
銀杏黄葉に雌雄のあるという話
思いがけず早き往診時雨くる
師走風東に西に選挙カー
木枯しや当落分けて夜が明けて
寄せ鍋のカキを食べたし夕時雨
大晦日ええ塩梅や介護の湯
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